「母という呪縛 娘という牢獄」感想

どんな本?

以前テレビで放送されていたんですが、教育虐待を受け続けた末、母親を手にかけてしまった娘の手記とそれを取材する記者の合作のようなノンフィクションです。事件に至るまで母親から受けてきた虐待の内容や、事件を起こした当初、犯行を否認していた犯人が罪を認めるに至るまでの経緯が書かれています。

感想

何としてでも医大、それがダメなら助産師にという母親の狂気じみたこだわりが恐ろしいなと感じます。母親が自分の希望を叶えるため、娘を脅したり時に暴力をふるってまで勉強を強いるというのが正直訳わかりません。どうやら医師以外の職業をかなり下に見てバカにしているようです。でも、作中には詳しく書かれていないから分からないんですが、この母親自身はどうも医師ではないらしいんですよね。なのに、医師以外を見下している。なぜ母親はそんな考えの持ち主なのか。その当たりをもう少し掘り下げてほしかったなと言う気がします。

加害者が虐待を受けていたって言うのは分かるし、内容的にも鉄パイプで殴られたりとか、酷いものではあるんですがそもそも母親がそうまでして娘を医師にしたいという動機が分からないというのはモヤモヤします。被害者である母親に配慮してなのか、ほぼ母親がどんな人だったのかが書かれていません。もしかすると、加害者も知らなかったんでしょうけど、だとしたらそこを取材して欲しかったなと思います。

加害者が受けた虐待は本当に理不尽だと思います。「テストは今まで習った範囲から出るんだからできて当たり前」とか。そんな簡単にできたら苦労しねぇわって感じです。それを延々攻め続けられるって言うのはキツかったろうと思います。普通だったら、そこで暴力に訴えるとかして徹底的に反抗したりするんでしょうけど、加害者が変に良い子だったので必死に従ってしまい、我慢できなくなった結果事件を起こしたんじゃないかなと思います。

親が子に期待する気持ちは分かります。でも、自分の希望を押しつけてその通りに動かすって言うのは違うと思います。自分にそれほどの希望があるなら、自分がやればいいだけ。子育てがとか、仕事がとか色々言うんでしょうけど、子供には一切言い訳を許さないくせに言い訳すんなと思います。

この本に出てくる親子は、お互いに「母のため」「娘のため」みたいなことを言っていますけど、何か結局お互いの方を向いている感じがしませんでした。「娘のため」と言いつつ、(おそらく)自分の希望とか、見栄を張るために子供に勉強を押しつけ、「母のため」と言いつつ、やりたくもないことを渋々やらされる。そんないびつな関係だったのかな。だとしたら、そんな悲しい親子関係ってないなと思います。

コメント

タイトルとURLをコピーしました