書店で見かけて以来、ずっと気になっていた一冊です。第27回鮎川哲也賞受賞作で「このミス」でも2018年に1位を取った作品です。これだけでもかなり面白そうだなと思うんですが、タイトルの「屍人」からして、なんかもうヤバそうな感じなので読んでみることにしました。
あらすじ
神紅大学のミステリ愛好会に所属している葉村と先輩の明智。明智は映画研究会の合宿で去年あったトラブルを調べるために今年の合宿に参加しようとしていますが、ずっと断られてきました。ですが、剣崎の助け船により合宿に参加できることに。晴れて合宿に参加できた3人ですが、宿泊先のペンションで予想もしなかった「ある事態」が発生。ペンションの外に出ることができなくなってしまいます。異常事態にうろたえる映画研究会メンバーとミステリ愛好家の二人(プラス一人)を嘲笑うかのように殺人事件が起きる。犯人は一体誰なのか、そして生き残ったメンバーは「ある事態」を乗り越えられるのか。
感想(ネタバレなし)
あらすじで触れた「ある事態」がかなり斬新です。今までこんな展開見たことがありませんでした。正直、現実離れした内容ではあるんですが、これはこれで面白かったなと思います。山荘のクローズドサークルって、正直使い倒された題材だと思うんです。そこに今までこんな発想なかったわという非常事態が重なったことで、事件全体の緊迫感が高まっていると感じます。殺人事件の他にその非常事態に対処する必要がでたり、推理するにもその非常自体を考慮に入れなければならないので謎が複雑になってるなと思いました。
シチュエーションはかなり変わってますが、トリック的な点はそんなに癖が強くはなく、非現実的っていうほどではありませんでした。ただ、非常事態に関わる部分は物語の最後になってもあまり明らかになっていません。この本はシリーズ物なので、おそらく次の話でまた何か分かるのかもしれませんが、非常事態に関してはちょっと不完全燃焼だなと感じました。
まとめ
斬新なシチュエーションで、緊張感があるストーリー展開なので、続きが気になる!と思ってサクサク読み進められました。ミステリ愛好会が出てくるので、ミステリに関する知識的なものも少し紹介されていたりする点も楽しめました。シリーズ物のようなので、続きも是非読みたいなと思わせてくれるいい一冊でした。さすがこのミスで一位になるだけの作品だなと思います。
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